ある晴れた日に、永遠が見える… 11
<11> ジャヌとパオロが買い物から帰ってくると、アンも彼らに加わり夕食の支度を始めたので、 カナはベッドに一人残された。 薬のためか、体の痛みはずっと楽になっている。 しかし心の痛みは、肉体の痛みが薄れる … Continued
<11> ジャヌとパオロが買い物から帰ってくると、アンも彼らに加わり夕食の支度を始めたので、 カナはベッドに一人残された。 薬のためか、体の痛みはずっと楽になっている。 しかし心の痛みは、肉体の痛みが薄れる … Continued
<10> 眠りの闇の中に電話のベルが鳴る。 何回か鳴り響いた末に、あきらめてベルは止む。 それがしばらく時間をおいて繰り返される。 次にすぐ近くで、携帯電話のベルが鳴る。 そのベルも同じように繰り返し鳴り響 … Continued
<9> カナは携帯電話を手にベランダに座り、混濁した夜が明けていくのを眺めていた。 朝焼けの街は、一切の苦しみや痛みと関係なく、美しかった。 薄いばら色の赤みが消え、透明な光がやわらかく街を包む。 サン・マ … Continued
<8> ※R描写有り 部屋に戻ると、カナはロベルトの母親マリアが持たせてくれた大きな紙袋をあけてみた。 オレキエッテという、耳の形をしたプーリア特産のパスタ、自家製の瓶詰めのトマトソース、 ソ … Continued
<7> 寝室のドアを開けるのが、ためらわれる。 出口が他にあるわけがないのに、カナは部屋を見回してみた。 しかしもしあったとして、私は裏口からこそこそ帰るだろうか? そんなことを、私はしない。 … Continued
<6> ※R描写有り アパートに荷物を置くのももどかしく、まっすぐ大学に向かう。 そこでカナの目に飛び込んできたのは、研究室のドアに張られた7枚のメモだった。 -カナへ。デザインを見せて欲しくて来たよ。 … Continued
<5> ロベルトのプジョーは、通称キャンティロードと言われる、フィレンツェからシエナに向かう道路を南下している。 なだらかな丘陵にオリーブとブドウの畑が交互に現れ、 糸杉が並木を作る先には必ず、石で作られた … Continued
<4> コーヒーの香りでカナは目覚めた。 一瞬ファビオが帰ってきたのかと思う。 やがてぼんやりとした頭に、昨夜のことがよみがえった。 ベッドを共にしたのはファビオではなく、ロベルトだったと。 心の奥に追いや … Continued
<3> イタリア人にとってはまだ宵の口の時間で、通りはそれなりに賑わっている。 バカンスのこの時期、街にいるのは観光客と、仕事で居残るしかない運の悪いやつ、 そしてどこにも出かける余裕のない者たち。 加えて … Continued
<2> 出会いに予感めいたものは感じなかった。 ファビオにははっきりと感じた官能の予感を、ジャヌには感じなかったのだ。 思えば彼の視線は女を愛でるにしては強すぎた。それに反応してしまったのが不思議なほどに。 … Continued