クラブ・ジェイン

  オステリアはこの夜テーブルが取り払われ、 片隅にわずかに椅子が並べられるだけになる。 「申し訳ございません。 本日はご予約いただいている方だけのパーティーで……」 入り口ではギャ … Continued

  誰より先にマリエが言った。 —この人たち、“クラブ・ジェイン”で私と同じアクターをしているの。 でも、なんだか変な気分。 —なんで？ —本当は、こ … Continued

  翌日、宅配便で送った荷物が届いた。 ワンルームの部屋は、いくつかダンボールが入っただけで急に狭くなった。 箱を開けるのにためらいを覚える。 ガムテープで封印したまま、押入れの奥に仕舞い込もうか。 あるいは、 … Continued

  ラウンジの片隅にカード用のテーブルがあった。 もしここがゲームコーナーのあるようなホテルだったら、 迷わずゲームをしに行っただろう。 リョウはテーブルを移り、ぐるりとまわりを見回してみる。 中年のカップルや … Continued

  多多戸を過ぎ、目立たないホテルの看板を海に向かって左折する。 きれいに刈り込まれたつつじのアプローチの中間あたりに、ゲートがあった。 ジェインがカードを渡すと、門衛がパソコンにナンバーを打ち込む。 すぐに、 … Continued

  リョウと母が“クラブ”に入会を済ませると、 ジェインが一度家にやってきた。 ブッフェ・ブルギニョンは最高の出来で、 ジェインはジャン・マルク・ミヨのグラン・エシェゾーを土産に持参し、 … Continued

  翌日はいつものように大学に行った。 受けるつもりのなかった授業まで受けた。 マンションには戻らず、そのままバーに向かう。 仕事用の着替えは持って出たのに、ジャケットを忘れた。 夕方の風は冷たくて、少し肩をす … Continued

  クライアントとの“デート”は、 終わったあとで必ずジェインに報告しなければならない。 今まで唯一その義務を怠ったのは、シライと飲みに行った夜のことだけだ。 今日の吉田とのやりとりは& … Continued

  そのあとは、シライとしばらく会わない日が続いた。 ＮＹ本社から日本支社に配属となった同僚の、 住まい探しや引越しの手伝いを頼まれた。 面倒だが仕方ない、向こうで世話になったやつで、 中学生の頃日本に住んでた … Continued

  「だからクライアント第一号が、お兄さんなのね」 「そうだ。じゃ、アクター第一号は誰だと思う？」 「ジェインさんの取り巻きの一人、でしょう」 —　翌週、待ってたら来たよ。 約束どおりの時間に。マリ … Continued