「駆けつけ保護」で危険が増す紛争地 — 集団的自衛権

posted in: 雑感NOTE | 0 | 2014/7/2

イスラムの国に行ってみて、わかったことが一つある。
シリア、ヨルダン、カタール、トルコ、エジプト、モロッコと、
どこも日本人に対してフレンドリーなのだ。
イスラムはもともと旅人にやさしいが、
それを超える親密感を彼らは示してくれた。
(ヨーロッパではもっと人々との間に「距離感」(差別感情も)を感じる)。

イスラムのシンパシーには、同じアジア人という共感もあるだろうし、
同じようにアメリカに爆弾(とくに原爆という非人道兵器)を落とされた国、
という被害共感もあるかもしれない。
でも一番大きいのは、日本が一度も彼らを攻撃したことがない、
日本は平和国家である、という信頼感である。

中東・イスラムにかかわるほぼすべての人が指摘しているのは、
集団的自衛権の行使容認は、この信頼を捨てることになる、ということだ。

安全な時期に安全な地域を観光しただけの私と違って、
紛争が日常の場所でNPOやNGO活動をしている人たちにとっては、
この信頼は文字通り安全保障である。

アフガニスタンで井戸掘りや灌漑緑化等を長く続けてきた中村哲氏は、
以前から、(米軍との集団自衛による)自衛隊に警護されたら攻撃の対象になる、そうなったら自分は逃げるしかない、もうNGO活動は出来ない、
とインタビューで語っていた。
実際にドイツのNGOなどは攻撃され、
活動が継続できているのはほぼ日本だけであるとも、どこかで読んだ。

積極的平和主義というのは、米国がアフガンでやろうとしていたことです。彼らの多くが「平和をもたらそう」とやってきましたが、人が死に、国が崩れ、破壊だけが残った。それがアフガン戦争の実態です。

近年の戦争はなるべく自国の兵隊の犠牲を出さないように、無人機で攻撃する。手段を選ばない汚い戦争です。あの仲間に加わるのかと思うと、身が汚れるような気がします。
集団的自衛権を考える 「ペシャワール会」現地代表・中村哲さん (中日新聞 5/3)

中村氏は直近のTVインタビューで、「日本は終わりだ」と、
さらに厳しい声を上げている。
少なくともこれまでの日本は終わる。
そしてこのあとは破滅に向かう、と言うのである。

押さえた口調だけに、一層怒りと悲痛が深いことを感じる。
砂漠を緑に変える仕事の、これまで積み上げてきた時間の分だけ、
憤りは大きいだろうと思う。中村氏は、活動にあたって、
地元で誰もが参加・継続できるような方策を考えだし、
土地の人々との本当の信頼関係を築いてきた人だ。
それを助けるどころか、一気につき崩すような国の政治が、
しかもNGO保護をひとつの大きな口実にして決定された。
怒りは二重に大きいだろうと思う。

安倍首相はオリンピック誘致でも「アンダーコントロール」と、
満面の笑みで大ウソを吐いて見せた。
NGO駆けつけ保護も、ウソ、と言って悪ければ、
現実を全く見ていない勝手な思い込みである。
それをまた強引に捻じ曲げて、集団的自衛権発動の大きな事例としている。

ウソと言えば、紛争地から逃げる邦人を乗せた米艦隊の保護、もそうである。
実際過去には、自国民の救出は自力で、と断られているとのこと。
米軍の紛争地での救出優先順位は、当然のことながら米国籍保持者、
続いて英国など同盟同志欧米国が来て、日本は最後の「その他」に入る。

この事実を言わず、子供を抱いた母親の図などを出して、
国民の安全を守るため、とぶち上げる。
これもまたウソ、と言って悪ければ根拠のない願望にしかすぎない。
しかもこれ、自衛隊が行くなら、米韓の保護などやる前に、
自国民を救出すればいいだけの話ではないのか(むしろ個別的自衛権の解釈変更で)。

このように、事実を捻じ曲げた美辞麗句を連ね、
あり得ないだろうことを最大の動機であるかのように持ち上げ、
実際には損となることを益と言いくるめて人を勧誘することを、詐欺という。

それはおかしいと、世論調査では半数以上の人が答えている。
姑息な手法だということは、みなわかっているのだ。
が、その民意は平然と踏みにじられる。
2割の票で6割の議席を獲得したにすぎないのに。
その2割の人たちだって、白紙委任状を渡したわけではなかろうに。
憲法という国の最高位の法を骨抜きにし、
自らの思い込みと願望によるやりたい放題を、独裁という。

イラクでのNPO活動に携わっている高遠さんも、
首相のいう安全抑止策が、実は180度異なる、危険を招く政策であることを、
リアルな現場の体験(あの人質事件等)から語っている。
集団的自衛権行使がもたらす惨禍
-「対テロ戦争」で若い命失い一般市民の犠牲を世界に拡散|高遠菜穂子さん
 (井上伸) – Y!ニュース

ブログでも紹介したけれど、
紛争地で実際に活動してきた二人の切実な声を、こちらにも。

ブログにも書かずにはいられなかった & ツイッターのメモ
ウソの上の集団的自衛権 — 腐った根っこから「破滅」へ ?

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