「次に読む本」としてしばらく積んであったこの本を、モンティ首相辞任と聞いてあわてて読んだ。まさに今が読むべきタイミングの本だった。しかもこれは、イタリアというよりも、むしろ日本の今このタイミングで読むべき本だった。
ということで、イタリア好きだけじゃなくて、著者と同じように、日本ってこのままいくとやばいんじゃない?と思ってる人にもおすすめ(ホント言うと、まだそう思ってない人にこそ、なんだけどね)。
著者によると、両国人の「おバカっぷり」は、イタリア人は「空回り型バカ」、日本人は「思考停止型バカ」と分析されている。
イタリアの危機が対岸の火事ではないと思う人が多いためか、よく売れているようだ。実際、両国の危機的状況に至る道筋や背景には、似たところが多い。
しかし、この本に書かれているイタリアのこと、日本で、日本語で得られる情報の中で、一番質量の薄い部分だったんだよね。
毎日毎日、どこかのTV局から、あるいは雑誌から、歴史美術建造物だけでなく、お料理やファッションや、イタリアの古びた街角や、味わい深い通りや、静かな小さな村の様子なんかが、流れてこない日はないっていうのに。
(私は正直言って、これらの情報に少し食傷気味なのだ。マスメディアが作り上げた消費財としては優れているんだろうけれど、表層的でステレオタイプな映像と言説ばかりで、うんざりすることも多いので)
一方で、この本に描かれているのは、近代から現代に至るイタリアの内情と、実際の人々の暮らしの様相。
南北格差の原因と現況、債務危機を招いた利権政治と闇経済、それらが実際の生活にどう組み込まれ、あるいはどう及んでいるのか。
ビアンキ家という架空の一家を登場させ、並走して描く手法が成功している。北イタリア出身のビアンキ氏に、ナポリ出身のビアンキ婦人、大卒なのにアルバイトでしか働けず、大の日本アニメオタクである息子ジャンルーカ。
ナポリには、更に過酷な暮らしを強いられているビアンキ婦人の妹一家。彼らにも職につけない息子マリオがいるのだが、マリオの友人トニーノ(マフィアの一員)の死のエピソードなど、まさに短編小説だった。
イタリア人の「おバカっぷり」をばっさり切った返す刀で、日本人の「おバカっぷり」に切り込むファブリツィオ氏は、イタリアも日本もすごく好きで、だからこんなに憂えているのだということが、しみじみと伝わってくる、良い本だった。
モンティ首相は、適量であればよく効く特効薬だが、ずっと使い続けると体を破壊する劇薬にたとえられていた。
このあとイタリアはどういう選択をするんだろう。
そして、そんな特効薬なんてどこにもみつかりそうもない、すぐこのあとの日本は?
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