色・褪せない 【2011予告】危険な愛

posted in: 色・褪せない | 0 | 2010/12/31
iro_title_00

 

できれば年内にもう1話ほど書きたかったのですが、
(予定外の番外編を挟んだりで)残念ながら時間がとれませんでした。

で、ここまで読んでくださった方に感謝の気持ちを込めて、
このあと紹介したいと思ってる作品を少しお知らせしときます。
これって、読んだことのある人、いるかな?

 

◆『いま、危険な愛に目覚めて』
栗本薫・選 日本ペンクラブ・編 集英社文庫(1985.7)

<収録作品>
・片腕=川端康成
・踊る一寸法師=江戸川乱歩
・侏儒=栗本薫
・獣林寺妖変=赤江瀑
・前髪の惣三郎=司馬遼太郎
・会いたい=筒井康隆
・カイン=連城三紀彦
・公衆便所の聖者=宇野鴻一郎
・星殺し=小松左京
・日曜日には僕は行かない=森茉莉

私は本当にこのアンソロジーが好きで、
大作家の冒険心溢れる作品に、
すっかり感服しています。

これらの短編全てに通じて言えるのは、選者の言葉にあるように、
「なまめかしい」ということ。
これはいわゆる官能小説とは軸が少しずれているけれど、
官能小説(のアナーキーさ)を突き詰めて到達した、
ある種の高みにも通じると思います。

また、私が小説を書きはじめたとき、解説にある、
栗本薫の作家としての信条の吐露(まるで「檄」)が思い出され、
その意味でも、私にとってとっても大事な作品となりました。

だが–と私は思う。小説家と生まれたからには、一番恐ろしい、
勇気のいる夢を見たってよいではないか。
すなわちペン一本でまったく架空の、
この世ならぬ空間を創造し、現実にはありうべからざる美男、美女やら、
途方もない悲劇、目をおおう惨劇、異常、異様、異形、狂気、狂恋、
妄執、豪奢、美、とにかく「まったく普通でない」もの、
反現実の空間を、たしかにわが手で現前させてやろう、という。

……

小説で現実をなぞって何になろう。
現実にすでに満ちあふれている現実だというのに。
小説は反社会、反道徳、反文学、反現実の反宇宙であるべきだ。
それを読んだがさいご二度と、
完全にはもとの正気の自分には、戻れなくなってしまう、
そんな妖しの黒魔術、悪夢を見るための阿片が私はほしいのだ。
これがそうかとあざ笑われる危険をおかしてでも、
やってみる価値があるではないか。
いやしくも人と生まれ、小説家として、ペンと紙とを与えられたのだから
–異次元の夢を。異形の悪夢を。
そして美しすぎる「もう一つの国」への扉、
ありうべき真世界への魔法の呪文を。

 

◆『エロチカ』
e-NOVWLS・編 講談社(2004.3)

20年後、この「檄」を新たに官能小説アンソロジーとしてまとめあげたのが、
『エロチカ』だと、私は(勝手に)思っています。
「なまめかしい」もだけれど、なにより危険度において、
しっかりとその心意気を受け継いでいる、と。

<収録作品>
・淫魔季=津原泰水
・愛の嵐(ポルノ・ポリティカ)=山田正紀
・大首(妖怪小説百鬼夜行第拾弐夜)=京極夏彦
・愛ランド=桐野夏生
・思慕=貫井徳郎
・柘榴=皆川博子
・あの穴=北野勇作
・危険な遊び=我孫子武丸

 

いずれも再読してからのご紹介となるので、
少し時間がかかるかと思われます。
気長にお付き合いいただければ嬉しいです。

 

では皆様、良いお年を!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください