◆インターネット・メディア
3月26日の「春、早く来い!」(「Dal0044」)で、原発事故について触れた。
地震・事故から2週間が過ぎたこの時点で、テレビ・新聞は、
変らぬ緊迫した状況と、電源回復への動きを報じていた。
けれども私はこの頃までに、
マスメディアの報道が事故の重篤さを過小に伝えているのではないかと、
感じるようになっていた。
インターネットでは、すでに専門家やフリージャーナリストが、
既存のメディアが語らない情報を語り、一歩踏み込んだ解説を行い、
事故の推移の厳しい予想を流していた。
やがて、テレビ・新聞報道では、
政府の希望的な観測が次々と現実に裏切られる姿を、見る結果となった。
事故は、事前にインターネット・メディアで語られた流れに従って
進んでいるかのように見えた。
それは不思議な感覚だった。
報道とは、起こったことを伝えることであるのに、
二つのメディア報道で、「起こったこと」は違っていたのだ。
これはおそらく、政府発表だけを流しているメディアと、
独自の取材を行ったメディアの違い、更に言うなら、
それを誰に気兼ねなく流すことができたかどうかの違い、
ではないかと思う。
あるいは、現在進行形の事故と、福島第一原発の原子炉に関するデータ、
そして原子力に関する専門知識(等への取材)、
最後に、公表される事故の経過情報を掛け合わせた見識であるはず記事で、
何が一番大きなウェイトを占めたのかの違い、と言うこともできるかもしれない。
この差異は、事故レベルについての報道にも明らかだ。
ネットメディアでは(海外メディアも)、
3月13-14日くらいには、 スリーマイル島の事故以上と指摘していた。
朝日新聞が、 海外関連機関やネットメディアの認識と同じ「レベル6」と報道したのは、
3月25日のことである。
しかしながら、その後も政府・原子力保安院の認定は見直されておらず、
4月1日には米シンクタンクからの引き上げ提言が出ているにもかかわらず、
公式にはまだレベル5*のままである。
政府・保安院・東電発表と、TV・新聞などの既存メディアを見ているだけでは、
私たちは現在進んでいる事故の真相を、 正しく知ることは出来ないのではないか、
あるいは、知らされるまでにかなり時間がかかるのではないか、
上記の記事を書いた動機のひとつは、ここにあった。
私たちが、この事故と原発について、
私たちの責務として考え続けていくための、
手ごたえのある参考情報は、ネットメディアにあると思ったのだ。
そうは言っても、私もネット・メディア初心者なので、
多くを見知っているわけではない。
今後もネットメディアを追うために、
どれだけの時間を費やせるのかもわからない。 なので、参考として、
私が注目しているポータルとなるサイトをいくつかここに挙げておこう。
「日本人ビデオジャーナリストの草分けとしてテレビ朝日ニュースステーションやTBSニュース23などで精力的なジャーナリスト活動を行ってきた神保哲生が、「日本にも広告に依存しない独立系の民間放送局が必要」との考えのもとで1999年11月に立ち上げた日本初のニュース専門のインターネット放送局」(同サイトより)
一部のプレミアムコンテンツは、1ヶ月525円(税込み)の会員登録が必要。
官房長官や原子力保安院、そして東電の記者会見等を生中継で流している。
他に、福島第一原発の設計者へのインタビュー(4月6日・未視聴)や、
自由報道協会・上杉隆氏の原発事故取材報告「鳩山前首相勉強会」
(4月6日・未視聴)、、
『「原子力村」とは何か? ゲンパツ行政を考える』
(上記記事追記で紹介・視聴報告)など、
興味深い番組が並んでいる。
毎日様々な視点から、たくさんの記事がアップされている。
ニュース記事の一部は会員(登録無料)のみアクセスが可能。
記事には読後の感想をラジオボタンでフィードバックさせることができ、
コメントを入れることもできる。
ちなみに、ランキングページから過去一週間のランキングを見ると(4月7日)、
『「ひとつになろうよ」より「てんでんこ」がいい』 (小田島隆氏)がトップで、
「とても参考になった」「ぜひ読むべき」ともに82%、コメントは139件である。
(これ、共感するところも多く、なかなか面白かったです。)
少し前のトップは『反原発と推進派、二項対立が生んだ巨大リスク』 (武田徹氏)で、
「とても参考になった」が72%、「ぜひ読むべき」も72%で、
寄せられたコメントは100件。
(ちなみに私の感想は、理論的にはそうかもしれないけれど、
ちょっと現実の諸相を単純化しているのではないか。
実際には二項だけでなく、いくつか立場を異にする意見もあるのだし、
リスク要因としてはこれ以外にも、もっと大きな問題があるように思う。
また、「反原発」と「推進派」が、 拮抗するほどのパワーバランスを、
継続的に持っていたとも思えない。 何より原発推進は国策だったんだし。
また、より安全な原子炉開発を封印した理由が、
現原子炉が安全ではないと(いう反対派の論を)認めたくない、
ということであっても、安全を最優先しなければならない立場にあって、
それを放棄した責任が軽減されるものではない。
ただし、ジャーナリズもこの硬直化の例外ではなく、
その対立を(我々も共に)乗り越えていくことが重要、 という結論には全面賛成で、
とても参考になった、というものである。 )
元原子力工学の専門家として、かつて原子炉の設計にかかわった大前研一氏も、
福島原発事故について発信し続けている。
ライブ視聴は本来有料だが、 原発についてのものは公開されており、
You Tube にアップされている。
氏の「そのとき見えているものからの推察」はわかりやすく、
原発推進の内側にいた人の、反省も含めた提言(のいくつか)にも、考えさせられる。
ただし、原発のエネルギーコストについて、
それが膨大なものになるので国営化しろ、というのは頷けない。
コストは電気料金・税金にはねかえるわけで、むしろ完全民営化の方向で、
製造・運営コスト(ともちろん安全性)によりすぐれた電力政策を、
探る必要があるのではないか。
また大前氏が決して言わないこと、つまり、何故国策・国営化してまで、
高リスク・高コストの原発を持ち続けなければならないのかは、
自分自身で考える必要がある。
NHK科学文化部のブログ。
解説委員による最新の情報解析が更新されている。
以上、これだけのサイトにも、膨大な情報がある。
それを逐一追っていくことは不可能だ。
やはりテレビ・新聞報道にも役割はあり、
複眼的に多チャンネルを見る必要もある。
結局、誰の言うことにシンパシーを感じるか、信頼感を持てるかで、
ポータルとなる場は絞られてくる。
また、インターネット・メディアは双方向回路なので、
上で紹介した日経ONLINEの記事評価やコメントだけでなく、
動画サイトでも、数々のコメントが即時に反映されている。
そこに、武田氏の言う「対立を乗り越えていく」ための、
アクチュアルな可能性があることは確かだと思う。
・・・以下4/12日に追記・・・
*このレベル評価は、4月12日に原子力保安院によって、
チェルノブイリと同等の「レベル7」に引き上げられた。
「暫定的に」という形容詞がついているが、これはどういう意味だろう。
(レベル7より引き下げが可能とは到底思えない。)
保安員は、放出された放射性物質はチェルノブイリの(現時点で)十分の一程度、
死者もいない、と、チェルノブイリに比べて事故程度は軽いと強調していたが、
ロシアからは、チェルノブイリは10日で収束した、と指摘されているのには、
どう答えるのだろう。
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