「This is it」 マイケル・ジャクソンの勝利 – 「ダンシング・イン・ザ・クローゼット」連載を終えて

posted in: 創作NOTE | 2 | 2009/11/10

「Dancing in the Closet」 の連載を終えて、
見つかった答えと、簡単に答えなど出なくて、
ずっと抱えていかなければならない問いとの両方が、胸にずしりと残っている。
そうこうするうちに映画「This is it」が封切りとなった。

映画は、マイケルが監督やバックバンド、ダンサー、スタッフたちと、
ショーを完成形に向けて作り上げていく過程がよくわかる、本当に感動的なものだった。
彼は粘り強く、妥協せず、情熱と信念、明確なビジョンを持ってリハーサルに望んでいる。
しかもその口調がとっても暖かで優しい。

マイケル・ジャクソンと一緒にステージに立つために、
世界中からトップクラスのダンサーやミュージシャンが集まってくるのも当然だろう。
彼と一緒に仕事をするのはプロとして最高の誇りだし、喜びだというのが、
画面からビンビン伝わってくる。

この映画がマイケルの音楽やパフォーマンスに対する熱い想いと、
ファンや世界に向けてどんなメッセージを伝えようとしていたか、
その誠実で真摯な姿をリアルに描きだしているのは間違いない。
もちろん彼がとてつもないカリスマ性を持つ天才だと言うことも一目瞭然。

リハーサルでは50%の力しか出さないと言われるマイケルだけれど
(にしてもダンスは相変らず切れがあるし、歌だってとってもいい!)、
つい本気を出してしまうところもあって、
100%のパフォーマンスがどれだけすごいかが、リハーサルの向こうに透けて見える。

実はこの映画を見る前から、私は「マイケル・ジャクソンの勝利」ということを考えていた。

 

10月24日の朝日新聞で、ケニー・オルテガ監督は、
ロンドン公演50回分が瞬時に完売したことについて、次のように語っていた。
「私も驚いた。私は『50回が売り切れだ。驚いたか?』と尋ねたが、
マイケルは『全然。僕のファンはすごいんだ』とちっとも驚いてなかった。
彼は、世界中のファンは自分を見捨てない、と確信していたようだ」

マイケルは、ファンの信頼に対してだけでなく、
それに自分が応えられることも、「確信していた」に違いない。
最後のステージを、最高のクオリティーのエンターテイメントとし、
誰も見たことのない夢の空間を描き出すこと、
そこに自分が長年訴えてきたメッセージを、これまで以上に強烈に打ち出すこと。
ロンドン公演は、実現していたら、ショーとして彼の最高傑作になっただろうと思う。

今まででも、彼ほどその楽曲やパフォーマンスが、
世界中で愛されたアーティストはいなかった。
このことをもって、マイケル・ジャクソンは勝利者だと、通常なら、言うことができただろう。
なのに私たちは、単純に彼を勝利者とみなすことが出来ないできた。

私は今、あらためて彼の強さを思っている。

極端に傷つきやすいと人だと、『新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書』(西寺郷太)にはある。
またよく泣く人で、She’s out of my life のレコーディングで、
10テイクの全てで最後に泣いてしまうので、クインシー・ジョーンズはあきらめて、
涙声のものをアルバムに入れたというエピ ソードがある。

ステージの上でもよく感極まって泣いた。
Will be there のビデオでは頬に涙が流れている。
とても優しい人だったと、誰もが言う。
だが彼は、決して弱い人ではなかった。

マイケル・ジャクソンは、栄光から”転落”した悲劇的な人だという、
広く流布しているイメージは、そろそろ塗り替えられてもいいのではないか…、
「Dancing in the Closet」を書きながら、私は次第にそう考えるようになっていた。

魔女狩り、集団リンチとすら呼ぶ人もいる冤罪裁判や、マスコミ・世間のバッシングも、
彼を打ち負かすことはできなかった。
長いインターバルだったけれど、とにかく彼はこの夏、
音楽シーンに復帰する準備をしていたのだ。
マイケルは、ロンドン公演によって、
最後にオセロのこまが全てひっくり返るような勝利を、「確信していた」のではなかったか。

コンサートは幻となってしまったけれど、でも、
リハーサルの彼の姿が残った。この映画のおかげで、
コンサートを見ただろう人数とは比べ物にならないくらい 多くの人が、
彼の貴重な、リアルな姿に接することができる。
ステージの完成形を思い描きながら見るマイケルの圧倒的な存在感は、
彼のマイナスのイメージなど瞬時に消してしまう。

マイケル・ジャクソンは、一見、志半ばで倒れたように見える。
何より、最後のステージを終えた後、曲作りに専念した彼が、
どれほどの作品を作ったか、とい う無念さがある。
けれども、彼の志はしっかりと作品として残されている。
その作品は、彼が望んだように、時間を超え、空間を越えて生きつづけるに違いない。

ネット上には「This is it」に対する賞賛のコメントが溢れている。
そのなかにとても印象深いものがあった。
ブロガーiga19 さんは、この映画の、
「誰も見たことのない彼に逢える」というキャッチコピーに怒りを覚えた、と言う。
http://d.hatena.ne.jp/iga19/20091031/p1 (「I lost tomorrow」)
主に日本のワイドショーから流れていた情報 だけでしかマイケルについて知らなかった彼は、
「誰も見たことがなかったのは、
マイケルの本質の部分を伝えずにセンセーショナルな部分というか、
上澄みの 部分だけ伝えていた日本のマスコミのせいなわけで、
僕は映画を見ている途中からすごくプンスカしてしまいました。」と書いている。

これをマイケル・ジャクソンの勝利と言わずして、なんと言えばいいのだろう。

 

◆最後に、私の好きな作品で、まだ紹介してなかったのをいくつか。
他にあまりにすごいのが多くて、こんなに素敵なのに、
なかなか上位に浮上してくれないんだよ…。

 

・Stranger In Moscow

 

・Who is it

 

・Fall again 
(demo音源しかないけれど、「もう一度君と恋に落ちたい」という内容の、とっても切ない曲)

 

 

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