シリア 「化学兵器破棄」騒動の陰で続く戦闘

posted in: Around the 中東、A piece of 中東 | 0 | 2013/9/17

13日、シリアが、化学兵器禁止条約への加盟を国連に申請した。
よく知らなかったこの条約、
締約国189か国、非締約国が7か国。
うちイスラエルとミャンマーは署名はしてるけど批准はまだ。
未署名なのがシリア、北朝鮮、アンゴラ、南スーダン、エジプト。
イスラエルは当然未加盟だろうと思ったら、
署名だけはしてるんだね。
シリアは、加盟することでイスラエルにも批准しろと迫ることが出来る。
イランも加盟してるから、この際一緒になって訴えたらどうだろう。

そして昨日、シリア化学兵器破棄について、米露も合意に至った。


具体的な方策については、
米露の主張の差異の大きさからどうなるかと思っていたんだけれど、
案外すんなりとまとまった。
これによりアメリカ軍事介入がとりあえず回避されたわけで、
大きな成果ではある。
外交努力による平和的な合意であることも。

ただ、私には、この騒動に感じていたある種の虚しさが、
そのまま残っている。

化学兵器禁止条約で、核不拡散条約が連鎖的に浮かんだ。
核不拡散条約は保有国5か国からの核拡散を防ぎ、
非保有国の核開発と保有を禁止するものだけれど、
米・英・仏・ロ・中以外に、
非批准国であるインドとパキスタンとイスラエルが保有していて、
今や北朝鮮も持ったらしい。
で、イランが疑われて、制裁を受けている。

核不拡散条約は、持ってる国がそれ以外の国に、
持っちゃダメ、と禁止しているわけで、このことの理不尽さと、
イスラエル・インド・パキスタンは黙認してるのに、
イラン・北朝鮮には査察と制裁を科すという、
ダブルどころかトリプルスタンダードの条約だ。

化学兵器に関しては、持っていい国というのはないので、
一応国際ルールとしてのまっとうさはあるけれど、
シリアに関する破棄プロセスが、たとえ国連での承認を要するにしても、
米露(に仏が加わって)で作成されるという大国主導と、
欧米がイスラエルの保持を問い、批准を促すことはないだろうという点で、
核不拡散条約と同じ匂いがする。
つまり、構造的な二重基準が透けて見えるのだ。

虚しさには、加えて、つぎの問題がそのまま残っていることがある。
シリアの「アラブの春」は、何故、
これほどの内戦状態にまで陥ってしまったのか。
何故、11万の死者と200万を超える難民を出すまでになってしまったのか。

ちょうど去年の今頃、シリア出身のフルート奏者の演奏を聴いた。
NOUN YA ・ 失われた風景と抵抗の旋律

パリ在住のナイサム・ジャラルは時々シリアに帰っていたのが、
すでに帰れなくなっていた。
彼女はあのとき、アサド政権の武力弾圧だけでなく、
反政府側の暴力と、欧米の周辺国の武器・資金援助という介入も、
厳しく批判していた。

彼女は、悪であるアサド政権対善である反政府勢力、
という見方をしてはいなかった。
虚を突かれた思いだった。
独裁政権に民主化要求をつきつけた「アラブの春」は、
とっくに変容していたのに、日本でこの点を指摘しているニュースも、
解説も、なかったのだ。

山本美香さんが取材中の銃撃で亡くなったのが、直前の8月20日。
彼女は離反兵士などで構成されている反政府勢力、
自由シリア軍に同行していた。
山本さんは政府側の民兵シャッビーハ(好戦的なならず者)
との戦闘に巻き込まれた、との報道だった。
が、いずれの側に撃たれたのか、真相はわからないという。
ただ、衝撃的なこのニュースが、
アサド政権の非道ぶりのプロパガンダに使われたことは確かだ。

先日読んだ青山氏の『混迷のシリア』には、
2011年の3月に、平和的な民主改革を目指した始まった示威運動は、
アサド政権の徹底的な弾圧もあって次第に武装化し、
同年の夏には武装集団に「ハイジャック」されたとある。

シリア内線のわかりにくさは、反政府側に様々な武装勢力が流れ込み、
しかもそれらが互いにバラバラなまま、
戦闘をくりかえていることにも一因がある。
その中の一つ、ヌスラ戦線というのはアルカイダ系であり、
シリア人ではない。

重要なのは、政府側だけが住民を殺しているわけではない、
ということだ。
単に戦闘に巻き込まれての死亡というだけでなく、
反政府武装集団も、制圧した地域で、住民を、
非協力的だと処刑したりしていた。

そしてもう一つ、欧米や周辺国は、直接的な軍事介入はしていなくても、
間接的にはこの間ずっと介入し続けてきた、という点。
アルカイダのような訓練された戦闘員は、
サウジアラビアやリビア、あるいはヨーロッパからも入り込んでいる。
彼らのシリア入りは黙認され、あるいは積極的に支援された。
一方(イランが支援している)レバノンのヒズボラは、
アサド政権側で参戦している。

もちろん介入は、戦闘員だけでなく、武器と資金援助でも行われている。
アメリカもつい最近、反政府側に武器を供与すると公言(実行も?)した。

何故内戦化し、何故それが激化してきたのか、
この答えは、あえて単純に言い切ってしまえば、
介入が行われ続けてきたからである。
つまり、内戦の終結など、周辺国も国際社会も、
本気で考えて来なかったのだ。
むしろ、内戦によりアサドのシリアが弱体化すること(だけ)を望んだ。
この事が、虚しさの底に大きく横たわっている。

弱体化(だけ)を望むというのは、アサドに代わる受け皿がないため、
完全にアサドを倒すシナリオはない、ということ(らしい)。
バラバラの反政府組織の連携はむずかしく(むしろ争いあっている)、
政治主体を担えるほどの組織も人材もいない。

そして、化学兵器騒動が続いている間も、今も、
日常化した戦闘が行われ、双方による殺戮が行われている。
アメリカの軍事懲罰攻撃にも、化学兵器騒動にも、
そして間接介入にも決定的に欠けているのは、
シリアの国民をこの困窮から一日も早く救おう、
彼らの暮らしを少しでも早く取り戻せるよう力を尽くそう、という視点だ。

難民は、北のトルコや西のレバノン、南のヨルダンなどに集中しているが、
ここに至って、人数を限ってヨーロッパも受け入れ始めた。
けれどもこれらは、人を川に突き落としておいて、
浮かんできた者だけに手を差し伸べる行為のようにも見える。
人道的な行いで、かつ必要とされるものではあるけれど、
少なくとも同時に、根本的な、平和的な解決のために、欧米露と周辺国は、
介入をどのように引き上げるのか、という平和プロセスの構築に、
シリアも含めて、とりかかるべきだと思う。

自由シリア軍は、当然のごとく、
シリアの化学兵器破棄と

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