Mensile120911 「3.11後」をあらためて意識する

posted in: 月誌 | 0 | 2012/9/11

この一年半、朝日新聞の原発関連記事を切り抜いている。
切り抜いてダンボールに入れていく。
それらはとっくに箱をはみ出し、
仕事の資料のとなりに積みあがって、崩れかかっている。
どうするんだろコレ、と毎日思いながら、
今日も切り抜いている。

デジタル版を追加すればいいんだろうか。
だけどなあ、その料金、
フリージャーナリストやネットメディアに回したいよなあと、
つい思ってしまう。
「3.11」直後からビデオニュース・ドットコムの会員になり、
先日上杉隆のU3Wにも登録した。

今回の事故直後にはっきりとわかったのは、
ネットメディアやフリージャーナリストの言説と、
大手メディアの報道に大きな開きがあるということ。
まず取り上げる取り上げないの差、
横並びの、提供された情報をそのまま流す記者クラブ報道か、
それともしっかりと取材し、”信頼できる”識者にインタビューした、
掘り下げた報道であるかという違い、
そして、ネットで指摘されたことが、
かなり時間がたってから新聞に掲載されるというタイムラグ。

かといって「プロメテウスの罠」という力のこもった連載や、
東浩紀からバトンタッチした高橋源一郎の論壇時評など、
読み応えのある記事もあるので、新聞もなかなか止められない。

今年になって、たまたま知人がFacebookのヘビーユーザーだと知った。
一年ほど寝かしておいたアカウントで彼と繋がったのが、間違いのもとだった。
彼は原発容認だったくせに、
事故後には東電批判を舌鋒鋭くぶち上げる人になっていた。
「自分は間違っていた」との深い反省を経て、である。

つい私もコメントを入れた。
FBに足を踏み入れるとき、
「友達」は実際に知っている人に限る、という自主ルールを課したのに、
私のコメントに「いいね!」してくれた、
“考えや感性が似通った”数人には、つい「友達」申請してしまった。
これが二つ目の間違いだった。

「友達」はいつのまに60名を超えた(これ以上増やしたくない)ものの、
大半は発信者ではなく、受信オンリー(「いいね!」すら押さない)だったりするので、
ニュースフィードは静かなもの、のはずだった。
が、”考えや感性が似通った”「友達」数パーセント(旧知の知人も入るが)の発信が、
想像を絶する質量だった。

かくして私は、新聞を切り抜き、FBをチェックし、
ついでにTwitterでフォローしてるフリージャーナリストや、福島の現場作業員や、
“考えや感性が似通った”学者知識人のツィートをざっと流し読みし、
(フォローしているのは十数人なのに、これまたすごい質量のツィートなのだ!)
面白そうなシェアやリツィートされた元記事を読み、
ビデオニュース・ドットコムやU3W(加えてニコ生やユースト)を視聴することになった。

最低の仕事と、最低の家事と、最低の外出と、
最低のリアル人間関係以外の時間が、こうして多量に奪われることになった。

もし福島の事故がなかったらと、ふと考えた。
私は今原発関連を追っているこの膨大な時間とエネルギーを、
何のために費やしていただろうか、と。

もっとたくさん本が読めたかもしれない。
もっとたくさん何事かを書けたかもしれない。
もう少しは仕事をしたかもしれない。
あるいは、日々のグチや考察を、
以前よく出入りしていたネット上のある場所で、
ある人々を相手に、おしゃべりしていたかもしれない。

私の時間・エネルギー配分は、あきらかに「3.11」以降変わってしまった。
私の人を見る目も変わってしまった。
「3.11」以後の、ある種ふるいのようなものが出来てしまった。
いつのまにかふるい落とされてしまった人間関係や、「場」がある。
ずっと変わらぬ友人も、見直した友人もいる。

福島の人たちが「3.11」前に戻れないように、
私もまた、「3.11」前には戻れない。
事故が無ければ、原発ごときに、
これほどの時間・エネルギーを奪われることはなかったのに、
そうぼんやり思ったあとで、
いや、それは違うだろうと、思い直した。
私たちが住む国に原発が54基あるということに、
「3.11」以前も以後もない。
私たちはおめでたくもまっすぐに、
「3.11」後に続く道を歩んで来たにすぎない。

この道のさきが、それでも少しは緩やかになり、
希望のようなものが見えるようになるのか、
それとも、さらに険しい道になるのか、
一年半たった今もまだ、定かではない。確かなのは、
「3.11」以前とは変わってしまった自分を抱え持った人たちと共に、
「3.11後」の世界に、生きていくしかないということ。

 

7.29脱原発国会包囲デモで踊る人 

7.29国会包囲デモで踊る人

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